人は悲しくて泣くのか?泣くから悲しいのか?
人は悲しくて泣くのか?泣くから悲しいのか?
哲学的な問いだが
このうち「泣くから悲しい」という考え方を認知心理学では抹消説、或いは発案者の名を取ってジェームズ・ランゲ説と呼ぶ
またこの抹消説をスポーツに応用したのがピア・ニールソンという女子ゴルフ出身のメンタルトレーナーである
彼女の指導を受けているヤニ・ツェンやチェナヨンは、ミスショットした直後に無理矢理口角を上げて笑顔を作り出す事でミスショット後に付帯して起こる筋肉の過緊張の抑え込みを図った
だが、ここで少し考えて欲しい
例えば今、皆さんの目の前に毒蛇がいたとする
そして今、皆さんは恐怖に慄(おのの)いてる
では今皆さんは
・毒蛇がいるから恐怖しているのだろうか?
・恐れ慄いているから、そこに毒蛇がいるのだろうか?
こんなものは考える余地もない
毒蛇がいるから恐怖心が生まれているに決まっている
毒蛇がいる、即ち、生命の危険が察知されれば恐怖するのが当然であるように
ミスが発生すれば、不愉快な気分になるのも当然の事
この様にジェームズランゲ説だけでは解決不可能な事象は数多にあり
本説に批判的な学説、すなわち「人は悲しい事があるから泣くのだ」という学説も存在する
これを中枢論、またはキャノンバード説と呼ぶ
ジェームズランゲ説にもキャノンバード説にも
有用な実験報告が発表されているので、恐らく双方ともに適応されるシーンがあるのだろうが
だが現在の研究状況だけでジェームズランゲ説を子供相手に濫用する輩がいたら
とてもではないが、そんなバカげた発想にはついて行けない
正に先程例示したヤニツェンやチェナヨンの現在を知っている者ならば今更説明する必要はないだろう
あれほど強かった2人が、特にヤニツェンについては今や殆ど優勝戦線に顔を出さなくなってしまった
洗脳まがいの自己暗示系のメンタルトレーニングの多用によるバーンナウト(燃え尽き症候群)が一因だという報告もかなりある
だが彼女らは成人であり、年間数億円を稼ぎ出すプロプレイヤーだ
ベネフィットに相応するリスクを自己責任で受容する行為は充分理解できる
だから、大人を対象にしたメンタルトレーニングの一環としてニールソンのトレーニングを導入する事については殊更非難を入れる気はない
しかし「(プロゴルファーが実践しているから)試合中にミスをしても笑え」などと子供に強いるコーチがいたとしたら、それは気が狂っているとしか思えない
「プロアスリートはベンチプレスを100㎏挙げるのだから、子供にもそう指導してた」と言っているようなものだ
パクり廻せば誰しもチャンピオン?苦笑
学びとは猿真似ではない
抹消論と中枢論をきちんと学んでいれば子供へ洗脳をかける様な凶行を称賛する訳がない
うろ覚えの知ったかぶりを振り回す、頭のおかしい指導者を放置しているから
いつまで経っても我が国の子供のスポーツ障害は無くならないし
その振り返しがゼロリスク神話のような、より一層トンチンカンな概念が発生してしまう
皆さんの廻りにもそんな
デカい声で厄災ばかり撒き散らす
パクリコーチはいないだろうか?